建設業の利益率の平均は25%|利益率の計算方法と改善ポイントを解説

建設業の利益率の平均は25%|利益率の計算方法と改善ポイントを解説

この記事では、建設業の利益率の平均と計算方法を、自社の経営状態を判断する視点から解説します。粗利率と営業利益率の違い、企業規模別の比較データ、利益率が低くなる4つの原因、そして自社で利益率を高める5つの具体策までまとめています。「自社の利益率が適正かどうか」を見極めたい経営者・経営幹部・経理担当者向けの内容です。

建設業の利益率の目安は粗利20〜25%・営業利益4%

建設業全体の粗利益率(売上高総利益率)の平均は約20〜25%が目安とされています。一般財団法人建設業情報管理センターや中小企業庁の調査をもとにすると、業界平均はおおむねこのレンジに収まり、近年も大きな変動なく推移しています。まずは自社の粗利率がこの水準に対してどの位置にあるかが、経営状態を把握する出発点になります。

一方で、営業利益率は大手ゼネコン平均で約4〜5%程度にとどまります。「粗利が20〜25%あるなら十分では?」と感じるかもしれませんが、この差の約20%分が社員の人件費・本社経費・営業費などの販売費及び一般管理費(販管費)として消えていきます。粗利率が高くても販管費の負担が重ければ、最終的な手残りは薄くなります。自社の利益を診断する際は、粗利率と営業利益率を必ずセットで確認しましょう。

他業種と比べた建設業の営業利益率

建設業(大手ゼネコン)の営業利益率は約4〜5%です。他の主要業種と比較すると以下の通りです。

業種営業利益率の目安
建設業(大手ゼネコン)約4〜5%
製造業約4.9%
卸売業約2.9%
小売業約2.8%

数字だけ見ると建設業は製造業と近い水準ですが、利益の安定性という観点では構造リスクが異なります。建設業は受注時の見積もりで利益率がほぼ確定する「請負型ビジネス」のため、受注後に資材費や人件費が上昇しても請負金額を簡単には変更できません。コスト変動リスクを自社で吸収しなければならない分、同じ利益率でも下振れリスクが大きいことを経営判断に織り込む必要があります。

企業規模によって利益率は大きく異なる

「建設業の利益率20〜25%」はあくまで業界全体の平均値です。自社の利益率を評価する際は、同程度の規模の会社と比較しなければ意味がありません。企業規模によって実態は大きく異なります。

年間売上規模粗利益率の目安特徴
5,000万円未満34.59%販管費が少ない分、粗利率は高め
20億円以上15.16%管理コストが増加し粗利率は低下

小規模企業の粗利率が高く見える理由は、家族経営・少数精鋭の体制で販管費が抑えられるためです。大企業ほど本社スタッフ・営業部門・管理コストが膨らみ、粗利率は下がります。また、大手ゼネコン5社の実際の粗利率は7.9〜12.3%、大手ハウスメーカー5社は17.4〜28.4%と、同じ建設業でも業態によって利益構造が大きく異なります。自社の数字を「業界平均25%」とだけ比べて一喜一憂せず、規模・業態が近い企業の水準を基準に置くことが重要です。

経営判断に使う建設業の5種類の利益率と計算方法

利益率は「何を基準に計算するか」によって5種類あります。それぞれが示す意味を理解すれば、自社のどこに収益性の課題があるのかを切り分けられます。経営改善の打ち手を決める前に、まずこの5指標で自社の現状を診断しましょう。

種類計算式業界目安
売上高総利益率(粗利益率)(売上高 − 売上原価)÷ 売上高 × 100約20〜25%
売上高営業利益率営業利益 ÷ 売上高 × 100約3〜5%
売上高経常利益率経常利益 ÷ 売上高 × 100約5%
総資本経常利益率(ROA)経常利益 ÷ 総資産 × 100約6%
自己資本利益率(ROE)当期純利益 ÷ 自己資本 × 100企業によって異なる

売上高総利益率(粗利益率)の読み方

建設業では、工事の受注額から直接の工事費用(材料費・労務費・外注費)を引いた「工事総利益」が粗利にあたります。粗利率はあくまでスタート地点であり、ここから会社を運営するための各種コストが引かれていきます。粗利率が高くても、販管費が多い会社では最終的な利益はほとんど残りません。自社の粗利率を見る際は、工事種別ごとに分解して「どの工事が稼ぎ頭で、どの工事が利益を食っているか」を把握することが、改善の第一歩です。

営業利益率が経営の実態をもっとも正確に映す

5種類の中で経営の健全性を判断するうえで最も参考になるのが売上高営業利益率です。粗利から販管費を差し引いた後の利益を見るため、「本業でどれだけ稼いでいるか」が一目でわかります。建設業では営業利益率が約3〜5%を下回る場合、原価管理や受注戦略の見直しが求められるサインです。粗利率は平均並みなのに営業利益率が低いなら課題は販管費に、粗利率自体が低いなら課題は受注価格や原価管理にある、という形で打ち手を絞り込めます。

建設業の利益率が低くなる4つの原因

建設業には、利益率が悪化しやすい構造的な要因が複数あります。自社の利益率が業界平均を下回っている場合、以下の4点のどれに該当するかを点検してみてください。

1. 多重下請け構造による中間マージンの発生

建設業の利益率を語るうえで外せないのが「多重下請け構造」の問題です。大型案件では、元請け(ゼネコン)→ 1次下請け → 2次下請け → 3次下請けと、案件が流れるたびに各階層でマージンが発生します。

実際に工事を行う末端の業者に渡る金額は、元請けの受注額から各階層のマージンが引かれた後の残り分です。自社が下請けの下層に位置している場合、利益率は構造的に圧迫されます。国土交通省も重層下請け構造の改善を重要課題として位置づけ、適正な発注に関するガイドラインの整備を進めていますが、業界慣行として根強く残っており短期解消は困難です。自社の収益構造を見直すうえでは、元請け比率をどう高めるかが中長期の経営テーマになります。

2. 建設資材と労務費の高騰

2020年代以降、建設業の利益率を直撃しているのがコスト高騰です。直近の数字を見ると深刻さがわかります。

  • 建設資材物価:2021年比で37%上昇(2025年時点)
  • 公共工事設計労務単価:2021年比で22.9%上昇(2025年時点)

建設業は受注段階で請負金額が確定するため、工事の途中で資材費や人件費が上がっても価格に転嫁することが難しい構造です。見積もり時の想定を超えるコストが発生すれば、その差分はそのまま利益の減少になります。長期工事を多く抱える会社ほど、契約段階での価格スライド条項の設定や、資材の早期発注によるリスクヘッジが利益確保の鍵になります。

3. 売上高重視・利益軽視の受注体質

「とにかく仕事を取る」という文化が根強い建設業では、採算が取れない現場でも受注してしまうケースが見られます。競合に取られたくない、売上を維持したいという判断が優先され、適正価格を下回る見積もりを出してしまうパターンです。

このような受注体質が続くと、現場の稼働率は高くても利益が残らない状態に陥ります。売上規模を追いかけるより、利益率を意識した受注戦略に切り替えることが経営改善の第一歩です。採算が取れない案件を断る判断も、経営上の重要な意思決定のひとつです。受注前の実行予算で粗利を試算し、最低利益ラインを下回る案件は受けないという社内ルールを設けることが有効です。

4. 原価管理の仕組みが整っていない

中小建設会社の多くで、工事進行中のリアルタイムな原価把握ができていないことが課題として挙げられています。「どんぶり勘定」と呼ばれる状態で、工事が完了して初めて赤字だったと判明するケースも珍しくありません。

工事の進捗に合わせて原価の見通しをリアルタイムで更新する仕組みがあれば、コスト超過に早期に気づき、追加発注の見直しや作業方法の変更で損失を最小化できます。利益率の高い建設会社ほど、原価管理の精度と更新速度が高い傾向にあります。これは経営者の意思決定次第で改善できる領域であり、4つの原因の中で最も着手しやすい打ち手でもあります。

利益率の低さが招く経営リスクと現場への影響

利益率の低さは、単に「儲からない」だけの問題ではありません。人件費・採用・設備投資といった経営の基盤を蝕み、悪循環を生みます。利益が薄い状態が続くと、社内では次のような影響が連鎖します。

  • 利益を確保するために人員を増やせず、少ない人数で現場をこなさざるを得なくなる
  • 残業・休日出勤が常態化し、離職率が上がる。採用コストがさらに収益を圧迫する
  • 下請けへの発注単価が削られ、協力会社との関係が悪化する
  • 設備投資や人材育成に予算を回せず、生産性が上がらない悪循環に入る

とくに人手不足が深刻化する現在、利益率の低さは採用力・定着率の低下に直結します。利益を確保できない会社は、賃上げも労働環境の改善もできず、若手から選ばれない会社になっていきます。つまり利益率の改善は、財務の問題であると同時に、人材確保という経営の最重要課題に直結するテーマです。

2024年4月からの時間外労働の上限規制適用により、これまで長時間労働で吸収してきた工期の遅れを利益で吸収せざるを得ない場面も増えています。利益率の確保は、規制対応とコンプライアンスの両面でも待ったなしの課題になっています。

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建設業の利益率を高める5つの方法

利益率の改善は、構造的な原因に対して順番に打ち手を講じることで実現できます。即効性の高いものから中長期的なものまで、5つの方法を解説します。

1. 適正価格での受注を徹底する

利益率改善の最大の手は、受注時に適正な価格を確保することです。値引き要請に応じて利益率を削ることが常態化している場合、原価管理をどれだけ厳しくしても利益は出ません。見積もりの段階で、必要な利益額を逆算した上で請負金額を設定することが基本です。

「安く取ればリピートにつながる」という考え方が、長期的には利益率を押し下げる最大の要因になります。採算が取れない案件への受注を断る判断も、経営上の重要な選択です。受注前の実行予算作成を社内の必須プロセスにすることで、赤字受注を組織的に抑止できます。

2. 原価管理をリアルタイムで見える化する

工事が完了してから赤字に気づく「どんぶり勘定経営」から脱するには、工事進行中にリアルタイムで原価を把握できる仕組みが必要です。見積もり時の計画原価と実際の発生原価を常に比較できる状態にすることで、コスト超過が起きている箇所に早期に対処できます。原価管理システムの導入で、担当者の負担を増やさずにデータを集約することが可能です。受注価格の適正化と原価管理の見える化は、即効性が高く、まず着手すべき2本柱です。

3. 生産性を上げて人件費の比率を下げる

同じ工事を短い工期・少ない人手でこなせれば、労務費の比率が下がり利益率が改善します。作業手順の標準化、熟練職人のノウハウの共有、効率的な資材調達ルートの整備などが具体的な手段です。1現場あたりの生産性が上がると、同じ人員でこなせる工事数が増え、会社全体の収益性が改善します。人手不足が続くなか、限られた人員で利益を最大化する生産性向上は、利益率と採用力の両方に効く施策です。

4. IT・DXツールを活用して管理コストを削減する

建設業向けの工事管理システムや積算・見積もりソフトを導入することで、事務・管理業務の工数を大幅に削減できます。属人的な管理から脱することで、熟練社員が現場業務に集中できる環境が整い、生産性向上にもつながります。国土交通省がi-Construction政策の下でICT活用を推進しており、補助制度を活用しやすい環境が整ってきています。導入コストは補助金や工数削減効果で回収できるケースが多く、中長期での利益率改善に効きます。

5. ブランディングで価格競争から抜け出す

「安さ」だけで選ばれる会社は、常に価格競争の渦に巻き込まれます。特定の分野・工法・地域での専門性を打ち出し、「この仕事はあの会社に頼む」という信頼を得られれば、値引きを求められる頻度が下がります。施工品質の実績・保証・アフターサービスなど、価格以外の付加価値を明確に伝えることで、適正価格での受注につながります。これは時間がかかる取り組みですが、確立できれば利益率を構造的に押し上げる、最も持続性のある打ち手です。

利益率改善には人材確保の視点も欠かせない

利益率を高める5つの方法のうち、「生産性向上」も「DX活用」も「ブランディング」も、実行するのは結局のところ人です。慢性的な人手不足のなかで、適正な人員を確保できなければ、無理な工期や少人数施工がミスや手戻りを生み、かえって原価を押し上げて利益率を悪化させます。

利益率の改善と人材の確保は、片方だけでは成立しない車の両輪です。原価管理や受注戦略で利益を生み、その利益で待遇改善・採用に投資し、確保した人材で生産性をさらに高める——この好循環をつくれるかどうかが、これからの建設会社の収益性を左右します。採用・定着に課題を抱えている場合は、建設業界に特化した採用支援を活用し、利益を生み出す体制づくりから着手するのが効率的です。

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まとめ

  • 建設業の粗利益率の平均は約20〜25%、営業利益率は大手ゼネコン平均で約4〜5%
  • 自社の利益率は「業界平均」ではなく、規模・業態が近い企業の水準と比較して評価する
  • 経営の実態は営業利益率に最もよく表れる。粗利率とセットで見れば課題の所在を切り分けられる
  • 利益率低下の主な原因は「多重下請け構造」「資材・労務費高騰」「売上重視の受注体質」「原価管理の不備」の4点
  • 改善はまず「適正価格での受注」と「原価管理の見える化」から。生産性向上・DX・ブランディングで持続的に高める
  • 利益率改善と人材確保は車の両輪。利益を採用・待遇改善に投資する好循環づくりが鍵

建設業の利益率は業界の構造的な課題と深く結びついていますが、受注戦略と原価管理の見直しによって自社で改善できる余地は大きく残されています。まずは自社の利益率を5指標で診断し、即効性の高い打ち手から着手することが、長期的に強い経営体質をつくる近道です。

建設業の利益率に関するよくある質問

建設業の粗利益率が20〜25%でも営業利益が少ないのはなぜですか?

粗利益率から、社員の人件費・本社経費・営業費などの販売費及び一般管理費(販管費)が引かれるためです。この販管費が粗利益率の大半を占めるため、最終的な営業利益率は3〜5%程度になります。自社の利益が薄いと感じる場合、粗利率が低いのか、販管費が重いのかを切り分けることで、改善すべきポイントが明確になります。

自社の利益率は何と比較して評価すればよいですか?

業界全体の平均(粗利20〜25%)だけでなく、自社と規模・業態が近い企業の水準と比較することが重要です。たとえば大手ゼネコンの粗利率は7.9〜12.3%、売上5,000万円未満の小規模企業では34%を超えるケースもあり、規模によって適正値が大きく異なります。同規模・同業態の平均を基準に置き、そのうえで営業利益率が3〜5%を確保できているかを確認するのが実務的です。

建設業の利益率を短期間で改善することはできますか?

短期的に最も効果が出やすいのは「適正価格での受注」と「原価管理の見える化」です。赤字案件の受注を断ること、現在進行中の工事の原価をリアルタイムで把握することは、今日から着手できます。一方、多重下請け構造の改善やブランディングの構築は中長期的な取り組みが必要で、即効性は低いです。まずは受注前の実行予算作成と原価追跡の仕組みづくりから始めることが現実的です。

利益率の改善と人手不足対策はどちらを優先すべきですか?

両方が相互に依存しているため、片方だけの優先はおすすめできません。利益が出なければ賃上げや採用に投資できず、人材が確保できなければ生産性向上やDXの実行も進みません。現実的には、まず受注価格の適正化と原価管理で利益を確保し、生まれた利益を待遇改善・採用に再投資して人材を確保し、その人材で生産性をさらに高める、という好循環を設計することが有効です。